コラム

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令和6年障害福祉サービス等報酬改定情報
(全サービス主な共通改定項目)

令和6年障害福祉サービス等報酬改定情報

令和6年4月からの障害福祉サービス等報酬改定が近づいてきています。
今回は全サービスに共通する9つの項目について再確認していきます。
特に、今回の改定項目の中に、対応できていないと“減算する”制度がありますため、ご注意ください。

1. 虐待防止措置未実施減算【新設】【対象:全サービス】

次の基準を満たしていない場合には、所定単位数の1%を減算となります。

  1. (ア) 虐待防止委員会(※)を定期的に開催するとともに、その結果について従業者に周知徹底を図ること
  2. (イ) 従業者に対し、虐待の防止のための研修を定期的に実施すること
  3. (ウ) 上記措置を適切に実施するための担当者を置くこと

【※虐待防止委員会の主な役割とは?】

  • 虐待防止のための計画づくり
  • 虐待防止のチェックとモニタリング
  • 虐待(不適切な対応事例)発生後の検証と再発防止策の検討

2. 人員基準における両立支援への配慮等【見直し】【対象:全サービス】

各サービスの人員配置基準や報酬算定における「常勤」要件及び「常勤換算」要件について、以下の見直しが行われます。

  • 「常勤」の計算に当たり、職員が育児・介護休業法等による育児・介護等の短時間勤務制度を利用する場合に加えて、「治療と仕事の両立ガイドライン」に沿って事業者が設ける短時間勤務制度等を利用する場合にも、週30時間以上の勤務で「常勤」として扱うことを認める。
  • 「常勤換算方法」の計算に当たり、職員が「治療と仕事の両立ガイドライン」に沿って事業者が設ける短時間勤務制度等を利用する場合、週30時間以上の勤務で常勤換算での計算上も1(常勤)と扱うことを認める。

3. 業務効率化等を図るためのICTの活用等(管理者の兼務)【新設】【対象:全サービス】

管理者の責務について、以下のような措置を講じた上で同一敷地内等に限らず、同一の事業者によって設置される他の事業所等(介護サービス事業所等の他分野のサービス事業所を含む。)の管理者又は従業者と兼務できることとする。

(管理者の責務)

  • 利用者へのサービス提供の場面等で生じる事象を適時かつ適切に把握
  • 職員及び業務の一元的な管理・指揮命令を行うことである旨を明確化
  • 事故発生時等の緊急時の対応について、あらかじめ対応の流れを定める
  • 必要に応じて管理者自身が速やかに出勤できること

4. 業務効率化等を図るためのICTの活用等(テレワーク可能)【新設】【対象:全サービス】

管理者は、介護分野における取扱い(※)に準じ、以下のような措置を講じた上で、管理上支障が生じない範囲内において、テレワークにより管理業務を行うことが可能である。

(管理者の責務)

  • 利用者及び従業者と管理者の間で適切に連絡が取れる体制を確保
  • 事故発生時、利用者の状態の急変時、災害の発生時等、緊急時の対応について、あらかじめ対応の流れを定める
  • 必要に応じて管理者自身が速やかに出勤できること
  • 人員配置基準等で具体的な必要数を定めて配置を求めること

※介護分野における取り扱い
厚生労働省:介護保険最新情報Vol.1169

一方で管理者以外の職種又は業務のテレワークは、個人情報を適切に管理していること、利用者の処遇に支障が生じないこと等を前提に、具体的な考え方を示すとされているが、現段階では具体的な考え方は示されていません。

5. 業務効率化等を図るためのICTの活用等(標準的な書式)【見直し】【対象:全サービス】

障害福祉サービス等事業者が障害者総合支援法等の規定に基づいて地方公共団体に対して提出する指定申請関連文書、報酬請求関連文書等について、令和5年度中に標準様式及び標準添付書類が準備されます。
ローカルルールがどのように書式へ反映されるのか?補足コメントがつく?などまだわかっていません。

6. 業務継続計画未策定減算【新設】【対象:全サービス】

【減算単位】

  • 所定単位数の3%を減算
    (対象サービス:療養介護、施設入所支援(施設入所支援のほか、障害者支援施設が行う各サービスを含む)、共同生活援助、宿泊型自立訓練、障害児入所施設)

  • 所定単位数の1%を減算
    (対象サービス:居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護、重度障害者等包括支援、短期入所、生活介護、自立生活援助、自立訓練(宿泊型自立訓練を除く。)、就労移行支援、就労継続支援、就労定着支援、就労選択支援、計画相談支援、地域移行支援、地域定着支援、障害児相談支援、児童発達支援、放課後等デイサービス、居宅訪問型児童発達支援、保育所等訪問支援(障害者支援施設が行う各サービスを除く)

以下の基準に適応していない場合、所定単位数を減算する。

【基準】

  • 感染症や非常災害の発生時において、利用者に対するサービスの提供を継続的に実施するための、及び非常時の体制で早期の業務再開を図るための計画(業務継続計画)を策定すること

  • 当該業務継続計画に従い必要な措置を講ずること
    令和7年3月31日までの間、「感染症の予防及びまん延防止のための指針の整備」及び「非常災害に関する具体的計画」の策定を行っている場合には、減算を適用しない。
    ただし、居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護、重度障害者等包括支援、自立生活援助、就労定着支援、居宅訪問型児童発達支援、保育所等訪問支援、計画相談支援、障害児相談支援、地域移行支援、地域定着支援は、「非常災害に関する具体的計画」の策定が求められていないこと等を踏まえ、令和7年3月31日までの間、減算を適用しない。就労選択支援については、令和9年3月31日までの間、減算を適用しない経過措置を設ける。

7. 情報公表未報告減算【新設】【対象:全サービス】

障害者総合支援法第76条の3の規定に基づく情報公表に係る報告がされていない場合、所定単位数を減算する。

  • 所定単位数の10%を減算
    (対象サービス:療養介護、施設入所支援(施設入所支援のほか、障害者支援施設が行う各サービスを含む)、共同生活援助、宿泊型自立訓練、障害児入所施設)

  • 所定単位数の5%を減算
    (対象サービス:居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護、重度障害者等包括支援、短期入所、生活介護、自立生活援助、自立訓練(宿泊型自立訓練を除く。)、就労移行支援、就労継続支援、就労定着支援、就労選択支援、計画相談支援、地域移行支援、地域定着支援、障害児相談支援、児童発達支援、放課後等デイサービス、居宅訪問型児童発達支援、保育所等訪問支援(障害者支援施設が行う各サービスを除く)

障害福祉サービス等情報公表制度の概要

障害者総合支援法第76条の3については厚生労働省 障害福祉サービス等情報公表制度 をご確認ください。

8. 都道府県等による情報公表に係る報告の確認【新設】

都道府県知事等は、指定障害福祉サービス事業者等の指定の更新に係る申請があったときは、当該申請に係る事業者から障害者総合支援法第76条の3の規定に基づく情報公表に係る報告がされていることを確認するものとする。

9. 地域区分の見直し【見直し】【全サービス】

地域区分について、令和3年度報酬改定と同様に、類似制度である介護報酬における地域区分との均衡を考慮し、原則、公務員の地域手当の設定に準拠している介護報酬の地域区分の考え方に合わせることとする。
また、平成30年度報酬改定の際に設けられた経過措置(平成30年以前の見直し前の上乗せ割合から見直し後の最終的な上乗せ割合の範囲において設定可能とするもの)を適用している自治体において、当該自治体の意向により、当該経過措置を令和9年3月31日まで延長することを認める。

まとめ

業務継続計画(BCP)や虐待防止、情報公表の対応ができていない場合、減算となります。法人にとっては、委員会活動、研修、訓練、情報公表など事務業務が多くなる改定です。
一方で業務の効率という観点で、管理者の兼務やテレワーク等も可能という改定があるため、うまく活用していきたいところですが、現実に管理者の兼務やテレワーク等が実施可能か考えると、人員配置状況や職員教育状況により、活用が難しい項目と感じます。
ルールが複雑化している上に、事務業務が増えている状況にあるため、法人や事業所内で事務業務を担うことができる人材(2番手育成)を育成することが今後、重要となりそうです。

参考:厚生労働省 令和6年2月6日第45回「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム」令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要(案)について

日本クレアス税理士法人 石川 敦士

ライター紹介
石川 敦士
石川 敦士
医療障がい福祉経営コンサルタント