令和6年4月以降
共同生活援助の報酬改定の変更点と注意点について

令和6年4月に障害福祉サービス等報酬改定が行われ、共同生活援助では基本報酬の変更があり、
影響の大きい報酬改定になりました。
今回は、共同生活援助の報酬改定による影響と来年に向けて実施する必要がある
地域連携推進会議についてお伝えします。

改定項目
① 基本報酬の変更
世話人の配置基準に応じた複数の基本報酬区分を変更し、基本的には一つの基本報酬区分に変更となりました。
≪基本報酬区分の見直し(介護サービス包括型の例)≫
[令和6年3月末まで]
イ共同生活援助サービス費(Ⅰ) (世話人の配置4:1以上)
ロ共同生活援助サービス費(Ⅱ) (世話人の配置5:1以上)
ハ共同生活援助サービス費(Ⅲ) (世話人の配置6:1以上)
ニ共同生活援助サービス費(Ⅳ) (体験利用)
[令和6年4月以降]
イ共同生活援助サービス費(Ⅰ) (世話人の配置 6:1 以上)
ロ共同生活援助サービス費(Ⅱ) 体験利用
② 個人単位の居宅介護等の利用の特例的取扱い
(介護サービス包括型、日中サービス支援型)
令和6年3月 31 日までとされている重度障害者に係る利用者ごとの個人単位での居宅介護等の利用について、当該経過措置を令和9年3月 31 日まで延長されました。
③ 人員配置体制加算
今回新たにできた加算で、人員配置体制加算は(Ⅰ)区分4以上83単位/日など複数の種類ができました。
今まで基本報酬区分で世話人4:1や5:1を取得されている方は、報酬維持のため、世話人6:1を取得されている方には、報酬アップのため積極的に取得することがいい加算です。
④ 日中支援加算(Ⅱ)の見直し
指定共同生活援助事業所又は外部サービス利用型指定共同生活援助事業所が、生活介護等利用者が心身の状況等によりこれらのサービスを利用することができないとき又は就労することができないときに、当該利用者に対して日中に支援を行った場合に 、初日から1日につき所定単位数を加算することになりました。
(従来は、当該支援を行った日が1月につき2日を超える場合に、当該2日を超える期間について算定可能という条件でした)
⑤ 地域連携推進会議
今回新たにできた運営基準で、各事業所に地域連携推進会議を設置して、地域関係者を含む外部の目を定期的に入れる取組を義務付けられました。
令和6年度は努力義務となります。
⑥ グループホームから希望する一人暮らし等に向けた支援の充実
(介護サービス包括型、外部サービス利用型)
グループホーム入居中に一人暮らし等を希望するに至った利用者を含め、一人暮らし等に向けた希望を持つ利用者を支援するため、現行の自立生活支援加算を拡充し、入居中における一人暮らし等に向けた支援や、居住支援法人との連携等を評価することになりました。
またグループホームの入居前から一人暮らし等をするための支援を希望する者に対する仕組みも作られるなど、一人暮らしに向けた支援を評価されることになりました。
⑦ 自立生活支援加算の拡充
従来、自立生活支援加算500 単位/回でしたが、 1,000 単位/月となる等、報酬と要件の変更がされています。
⑧「退去後共同生活援助サービス費」「退去後外部サービス利用型共同生活援助サービス費」 2,000単位/月
今回新たにできた加算で、グループホームを退居した利用者(自立生活支援加算(Ⅰ)又は(Ⅲ)を算定していた者に限る。)に対し、利用者の居宅を訪問していくつかの要件を満たす内容の支援を行った場合に、退居日の属する月から3月間(引き続き支援することが必要であると市町村が認めた利用者に対しては6月間)に限り、所定単位数を算定することができるようになりました。
⑨「ピアサポート実施加算」「退去後ピアサポート実施加算」 100単位/月
今回新たにできた加算で、一定の基準を満たした事業所において、障害者又は障害者であったと都道府県知事が認める者である従業者であって、障害者ピアサポート研修修了者であるものが、利用者に対して、その経験に基づき相談援助を行った場合に加算されることになりました。
基本報酬変更に伴う影響について
基本報酬区分が世話人の配置基準6:1のみになったことにより、
今まで世話人の配置基準4:1や5:1の事業者は、大きな影響をうけることになりました。
例えば、世話人4:1の区分6の利用者の場合、以前は667単位/日だった基本報酬が、600単位/日と1日67単位報酬減となり、月間の単位数にすると、約2,010単位報酬減となってしまいます。(内訳:(667単位-600単位)×30日)
そのための対応策としては、新たにできた“人員配置体制加算”の加算を取得していくことが必要となります。
人員配置体制加算(Ⅰ)の場合、区分4以上83単位/日、区分3以下77単位/日が各利用者で加算されます。
ただし人員配置体制加算の取得に際しては、いくつか注意があります。
注意点①
利用者の数を12もしくは30で除して得た数以上の世話人又は生活支援員が配置することにより取得できる加算が異なります。
注意点②
特定従業者数換算方法※を用いて、従業者の人数を計算します。
※従業者の勤務延べ時間数を除するべき時間数を 40 時間として、従業者の員数に換算する方法です。
また人員配置体制加算を算定するために確保すべき勤務時間の延べ数の計算方法は、1週40時間として計算することとされています。
注意点③
特定従業者数換算方法においては有給休暇や病休があった場合、そのまま特定従業者数換算数が減る計算になります。
今後の運営における注意点について
今回報酬改定の論点でも何度か議論されていましたが、共同生活援助サービスは、最近多く開設されているため、どの事業所も“障害特性や障害程度を踏まえた支援の質の確保”が懸念されていました。
支援の質の確保に向けた一つの対応として、令和5年“食材料費の取扱い等について”通知があります。
通知の中には、「運営規程に利用者から徴収する食材料費の額を定めなければならないこと、残額を他の費目に流用することや事業者の収益とすることについては指定基準に違反すること」が記載されています。
この食材料費の取扱いを把握するためには、各食事でどれだけ費用がかかったか記録し、
各利用者からどれだけ徴収したかを管理する必要があります。
また利用者から徴収しすぎた場合には、精算するなどの適切な対応が必要です。
この食材料費の取扱い等は、今後の実地指導でも確認される可能性が高いことや令和7年度から義務化になる“地域連携推進会議”でも参加者から確認される可能性も高いです。
報酬改定に伴う報酬変更だけではなく、通知されているような内容も把握した上でサービス運営を進めていく必要がありそうです。
参考通知:
事務連絡令和5年10月20日厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部
https://www.city.kobe.lg.jp/documents/43700/20231020_gh_shokuzaihi2.pdf
令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容
https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001205321.pdf
令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要
https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001205322.pdf
