コラム

Column

障がい福祉サービスのM&Aが活発化!
~M&Aの方法とは?~障がい福祉特有の注意点を解説

障がい福祉サービスのM&Aが活発化!~M&Aの方法とは?~障がい福祉特有の注意点を解説

障がい福祉サービス事業所は、増加に伴い、障がい福祉サービスのM&Aも増えています。
最近では、障がい福祉サービス事業と親和性の高い介護事業者からの参入、
異業種からの新規参入も増えています。
障がい福祉サービス事業は、障害者総合支援法に基づき各行政のルールに合わせた
注意点も理解しながら対応を進める必要があります。
今回は、障がい福祉サービス事業のM&Aにおける方法と注意点をいくつかお伝えします。

障がい福祉事業のM&Aの背景

障がい福祉事業は、事業の性質上、経営状況が悪化しても廃業が難しく、継続が必要となってきます。
可能であれば、現在の法人、現在の職員、現在のサービス体制で継続できることが利用者にとって望ましいです。
しかし法人経営が苦しく、どうしても法人存続が難しい状況になる場合や
経営者が高齢で交代が必要になる場合、行政から指導が入り、経営者交代が必要な場合など
様々なケースがあるかもしれません。
その場合には利用者へのサービス提供を継続し、利用者への安全を確保するために、
M&Aを行うことが必要な場合があります。

障がい福祉サービス事業のM&Aニーズは、下記のようなものがあります。

【譲り渡す側】
・代表が高齢で引継ぎたい
・利用者がなかなか集まらず、事業存続が厳しい
・職員の確保ができず事業存続が厳しい
・報酬改定により報酬単価が下がることが予想されるため、一部事業のみ辞めたい
・法人に指導が入り、譲り渡す必要がある
・会社が大きくなってきたため、売却したい
・廃業の手続きを簡素化したい

【譲り受ける側】
・新しい事業をスピーディーに展開したい
・初期投資を抑えながら、新しい事業をしたい
・複数事業を展開することでスケールメリットを出したい
・事業のノウハウ(営業や人材採用など)を獲得したい
・不足する職員の補充を行いたい
・総量規制がある場所に事業展開をしたい
・譲り渡す側が付き合いのある業者と連携したい

M&Aの主な方法~株式譲渡と事業譲渡~

M&Aを考える際には、一つの事業だけを譲り渡す/譲り受ける場合、
法人すべて譲り渡す/譲り受ける場合、法人を存続し代表者を変更する場合など
いくつかのパターンがあります。
今回は、障がい福祉事業における“株式譲渡”と“事業譲渡”のメリット・デメリットをお伝えします。

株式譲渡とは、株式を所有する者(株主)がその株式を他の個人や法人に売却することをさします。
障がい福祉サービスにおける株式譲渡のメリットは、“法人はそのまま継続する”ため、
行政への指定申請等の手続きが簡素化されることが主にあります。
株主・代表者が変更となるため、代表者変更の手続きや利用者等との契約手続きは必要です。
デメリットは、“業務内容や指導内容を全て引き継ぐため、事業運営が適切に行われていないと
指導内容を引き継ぐこと”が主にあります。

事業譲渡(Business Transfer)とは、ある企業がその事業の一部または全部を他の企業に売却・移管することをさします。
障がい福祉サービスにおける事業譲渡のメリットは、“法人内で統制がしやすく、管理がしやすくなることや施設間の異動など柔軟性があること”が主にあります。
デメリットは、“行政への手続きを新規指定申請時と同様に対応する必要があること”が主にあります。
その他、職員の雇用契約や利用者の契約をすべて締結する必要があります。

M&Aで注意するポイント(譲り渡す/譲り受ける共通)

障がい福祉サービスのM&Aを行う際には、以下のような注意点が重要です。

  1. 職員の扱い

    M&Aによって職員の雇用状況や労働条件が変化するかどうか慎重に扱いを決定することが重要です。
    特に障がい福祉サービスでは、職員が利用者との信頼関係を築いている場合も多いため、
    職員の扱いには十分な配慮が必要です。また、組織文化や価値観の適合性も確認し、
    調和を図ることが重要です。

  2. 利用者への通知

    障がい福祉サービスは利用者のニーズや福祉の質を最優先に考える必要があります。
    M&Aによる統合後も、サービスの提供が継続的に対応できるか、利用者、家族に支障が生じないよう
    扱いと通知が重要です。

  3. 法的・ルールのコンプライアンス

    障がい福祉サービスは、地域によって異なるルールがあります。
    M&Aを計画する際には、これらの法的な側面も調査の上、十分に理解し、適切な手続きを
    遵守することが重要です。

  4. 関係者への説明責任

    利用者、職員だけでなく、パートナー企業や連携を今までしていた関係会社や地域社会など、
    適切なコミュニケーションを行うことが重要です。

  5. 助成金・補助金の取扱い

    M&Aを実施する時には、申請中の助成金や補助金、又、受給済みの助成金や補助金がある場合があります。
    このようなもの中には、返還義務や引き継ぎ手続きが定められていることがあります。
    事前に助成金や補助金の条件や行政へ確認しておくことが重要です。

  6. 引き継ぎができる加算や報酬の確認

    障がい福祉サービス事業の収入は、基本報酬に加え、加算を取得し、収入が決まります。
    これは事業所毎で異なりますが、開設してからの年数等により、
    報酬の変更や加算取得できるものとできないものが中にはあります。
    これらは個々の状況によるため、行政へ確認することが重要です。

今後M&Aを検討されている場合、様々な方への相談とM&Aについて多くの実績を有している専門業者にもご相談しながら進めることが納得したM&Aにつながる可能性が高くなります。

ライター紹介
石川 敦士
石川 敦士
医療障がい福祉経営コンサルタント