障害福祉サービスM&A徹底ガイド~売却・事業譲渡で後悔しないためのポイント~
障害福祉事業者の方で事業の売却を考えているけど、何から調べればいいか分からない…とお悩みの方へ、本コラムでは障害福祉サービス事業のM&Aを検討している経営者や施設管理者を対象に、売却・事業譲渡で後悔しないための具体的なポイントを解説します。M&Aの基本的な流れからメリット・デメリット、成功のための実務的なアドバイスまでを網羅的に記載しますので、ぜひ最後までご覧ください。
障害福祉サービス業界のM&Aとは
障害福祉サービス業界のM&A(Mergers and Acquisitions:合併・買収)とは、事業の譲渡や売却を通じて、企業の経営権や事業自体を他社へ引き継ぐことです。これにより、売り手側は事業承継問題を解決し、まとまった売却益を得ることができます。一方、買い手側は新規事業への参入を容易にし、事業規模を拡大することが可能になります。特に障害福祉サービスは、利用者にとって不可欠なサービスであり、事業承継の課題をM&Aによって解決することは、サービスの継続にも繋がります。
障害福祉事業者のM&A検討の理由
以前のコラムでもお話しした内容ですが、当センターに寄せられる売却相談の売却理由内訳から、M&Aを検討する事業者の主な課題と悩みを読み解きます。
売却理由の内訳の詳細は過去コラムをご覧ください。
売却か継続か?障害福祉サービス事業者がM&Aを考えるポイントとは
- 後継者不在:親族内承継が難しい場合、事業を継続するためには外部への売却が有効な選択肢となります。
- 経営体力の限界:人材不足による運営体制の維持困難、利用者獲得競争の激化、運営コストの上昇などにより、経営継続が困難になる場合があります。
- 事業の選択と集中:他の事業に経営資源を集中させるために、障害福祉サービス事業の売却を検討するケースもあります。
- 代表の体調不良や引退:経営者の健康問題や引退に伴い、事業譲渡・売却を検討することがあります。
- 人材確保:M&Aを通じて経験豊富な有資格者を獲得し、サービス品質の向上や事業拡大を目指します。
- 地域連携の引継ぎ:既存事業所が築き上げてきた地域住民や行政との関係性をスムーズに引き継ぎたいと考えます。
- 運営ノウハウの取得:既存事業所の運営ノウハウや実績を活用し、新規事業参入や事業拡大を効率的に進めたいと考えます。
- 許認可取得の手間と時間:新規で事業所を開設する場合に比べて、M&Aは許認可取得の手間や時間を短縮できるメリットがあります。
障害福祉サービスM&Aの流れと手続き
M&Aの基本的な流れは以下のステップで進められます。
仲介会社によって流れが異なることもあると思いますが、一般的な流れをご紹介します。
- 相談:まずはホームページやお電話でM&A仲介会社に問い合わせます。自身でM&Aをされる方もいますが、M&Aでは複雑な要点が多く発生することが多いため、専門家に仲介を依頼することをお勧めします。
- 初回面談:M&Aの専門家に相談し、適切なアドバイザーを選定します。ご面談の際には、経営に対する考え方や会社に対する想い、「譲渡・売却・事業承継」をご検討の理由などを聞かれることが多いです。
- 秘密保持契約とアドバイザリー契約:M&Aは秘密厳守のため、仲介会社と秘密保持契約を締結します。契約締結後、買い手候補に買収の打診が可能になります。
- 匿名概要書の作成:伺った内容を基にして、売却の価額も含めた諸条件の摺り合わせをした後に、匿名概要書(ノンネーム)を仲介会社が作成します。この情報をもとに買い手が問合せをしてくることが一般的なので、より魅力が伝わるように作成してもらいましょう。
- マッチング:買い手候補の探索、売り手法人と相性の良い買い手候補を探します。トップ面談では、実際に買い手候補とお話いただきます。買い手候補が複数いる場合は何度も面談するケースがあります。納得のいくお相手が見つかるまで面談は何度でも可能です。
- 意向表明・基本合意:トップ面談の後に、買い手候補が前に進めていくために、「価額・スケジュール・諸条件」をどのように考えているかを記載した、意向表明書を受領します。複数の買い手から受領した場合は、どの買い手候補に売却をするか決定します。
- 買収監査(デューデリジェンス):買い手候補は、売り手から提出された資料が適切かどうか、判断する検証を行います。主には、財務・法務・労務が中心となります。
買収監査は売り手にとって負担となる部分なので、仲介会社でサポートしてもらえるのか事前に確認しておきましょう。 - 最終条件の調整・譲渡契約の締結:買収監査の後、最終的な条件を踏まえた譲渡契約を締結します。
- 従業員や関係者へのご説明:従業員や関係者への売却の説明はとても大切です。なぜM&Aを検討したのか、また、なぜこの買い手候補に譲り渡しを行うのか売り手の想いを伝えます。経験豊富なアドバイザーが同席可能な仲介会社であれば、円滑な説明をサポートしてもらえます。
- 譲渡の実行:譲渡を実行し、PMI等を実施します。仲介会社が譲渡後の相談に乗ってくれるかどうかも事前に確認しておきたいポイントです。
さらに詳しい流れをしりたいかたはM&Aの流れページをご参照ください。
M&Aの流れ詳細はこちら
一般的な流れをご紹介したところで、障害福祉事業ならではの工程として下記も挙げておきます。
★行政への届け出と許認可取得
障害福祉サービス事業のM&Aでは、行政への届け出や許認可の取得が不可欠です。事業譲渡の場合、旧事業所の廃止と新事業所の指定申請手続きを同時に行う必要があります。行政との事前相談や協議をM&A手続きと並行して進めることがスムーズな進行に繋がります。M&A仲介会社を選ぶ際には業界知識が豊富で、行政とのやり取りもしっかり理解している先を選ぶよう注意しましょう。
★人員基準・配置体制の確認
障害福祉サービス事業を運営するには、法令で定められた人員基準や配置体制を満たす必要があります。M&Aの際には、譲渡後にこの基準が維持できるかどうかの確認が非常に重要です。特に管理責任者や有資格者の残留は、事業継続に直結するため、M&Aの交渉段階で明確にしておくべき点です。人員配置体制が不十分だと減算の対象となる可能性があり、収益に影響が出ます。
障害福祉サービスM&Aのメリット
社会福祉サービスのM&Aをすることで得られるメリットについて、売り手・買い手双方の視点からご紹介します。
- 売り手のメリット
- 事業承継問題の解決:後継者不在の場合でも事業を継続させることができます。
- 従業員の雇用継続:従業員の雇用が維持され、職を失う心配が少なくなります。
- サービスの継続:利用者へのサービス提供が継続されます。
- スケールメリット:大手グループインで経営は任せつつ事業を拡大できる。
- 買い手のメリット
- 新規事業への参入が容易:既存の利用者、運営ノウハウ、許認可などをまとめて取得できます。
- 市場シェアの拡大:同業種でのM&Aにより、迅速に市場シェアを拡大できます。
- 人材確保:慢性的な人材不足の業界において、経験豊富な人材を一括で獲得できます。
M&Aをすることで得られる主なメリットをご紹介しました。反対に注意すべきポイントもありますので、メリット・デメリットを把握したうえで選択ができるように備えることが重要です。
M&Aで注意すべきポイント
スタッフ雇用やサービス継続への配慮
M&A成功の鍵は、スタッフの雇用継続と利用者へのサービス継続に細心の注意を払うことです。従業員に対しては、M&A後も安心して働けるような労働条件の維持を原則とし、変更がある場合は個別に同意を得ることが重要です。利用者へは、サービス提供体制が変わらないこと、これまで通りの支援が受けられることを丁寧に説明し、不安を解消することが求められます。
補助金・報酬基準の変化と留意点
障害福祉サービス事業は、補助金や報酬基準に大きく依存しています。M&Aを検討する際は、これらの基準が将来どのように変化するかを予測し、事業計画に反映させる必要があります。報酬額や加算要件が変更されることで、収益構造が大きく変わる可能性があるため、常に最新の情報を把握し、専門家と連携しながらリスクを評価することが重要です。
コンプライアンス・行政リスク
障害福祉サービス業界は、人員配置基準、設備要件、運営基準など、厳格な法令遵守が求められます。過去の不正請求や行政指導の有無は、M&Aにおける重要なチェックポイントです。デューデリジェンスの際に、コンプライアンス体制が適切に整備されているか、行政との関係性が良好であるかなどを徹底的に確認し、買収後の行政リスクを最小限に抑える必要があります。
はじめてのM&Aを成功させるために
障害福祉サービスのM&Aは、事業承継や事業拡大の有効な手段ですが、成功のためには周到な準備と専門的な知識が不可欠です。
- 業界の特性理解:障害福祉サービス業界特有の法規制、報酬体系、人員基準などを深く理解することが重要です。
- 専門家との連携:M&Aアドバイザー、弁護士、会計士など、業界に精通した専門家のサポートを積極的に活用しましょう。
- デューデリジェンスの徹底:財務状況だけでなく、人材、コンプライアンス、行政リスクなど、多岐にわたる項目を詳細に調査し、潜在的なリスクを把握することがM&A後のトラブルを避ける上で不可欠です。
- 従業員・利用者への配慮:M&A後も事業が円滑に運営されるよう、従業員の雇用維持と利用者へのサービス継続に最大限配慮しましょう。
これらのポイントを踏まえ、後悔のないM&Aを実現し、持続可能な障害福祉サービス事業の発展を目指してください。
障害福祉M&A支援センターでは障害福祉業界のM&A(譲渡・事業承継)のお手伝いをしています。案件成約実績は1,700件以上(2025年6月30日現在)と豊富ですので、M&Aについてお悩みでしたら是非お問合せ下さい。
ブティックス(株)へ入社後、介護用品通販ショップの運営責任者、有料老人ホームの入居者紹介事業の責任者を歴任。その後、CareTEXの立ち上げメンバーとして、様々な介護福祉業界ニーズのマッチングに着手。
2015年にはM&A事業を立ち上げ、介護福祉業界における広い人脈を背景に10年間で120件の成約実績を持つ。
