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【令和8年度最新】知らないと危険な制度変更

―障がい福祉報酬改定で何が変わるのか?今後の経営と新規参入戦略―

2026.04.30
【令和8年度最新】知らないと危険な制度変更

はじめに

令和8年度に向けた障がい福祉サービス報酬改定は、報酬単価の見直しにとどまらず、事業運営に大きな変化をもたらす内容となっています。
今回の改定は、これまでのように加算を取得していれば一定の収益が確保できる構造から、「その運営が適切かどうか」を説明できる事業所が評価される時代へと移行しています。
本稿では、制度改正の概要を整理した上で、顕在化するリスクと今後の方向性を記載します。

令和8年度報酬改定事項の概要 ― 業界全体が厳しくなると考えられる ―

今回の報酬改定は、処遇改善加算の拡充により職員の処遇改善はあったものの、経営面ではマイナス要素が多く、障がい福祉サービス全体として、厳しい局面に入ったと考えられます。
今回の報酬改定の主な変更は以下の通りです。

・処遇改善加算の拡充と厳格化
福祉・介護職員などを含む障害福祉従事者を対象に、幅広く月1.0万円(3.3%)の賃上げを実現する措置を実施するとともに、生産性向上や協働化に取り組む事業者の福祉・介護職員を対象に、月0.3万円(1.0%)の上乗せ措置を実施する。

・就労移行支援体制加算の見直し
一事業所で算定可能となる年間の就職者数に上限(定員数まで)を設定するなど、適正化を行う。

・就労継続支援B型の基本報酬見直し
平均工賃月額の算定方式の見直しにより、平均工賃月額が約6千円上昇し、想定以上に高い報酬区分の事業所の割合が増加したことに対応し、基本報酬区分の基準の見直しを行う。

・令和8年度の新規事業所開設に伴う措置
就労継続支援B型、共同生活援助(介護サービス包括型・日中サービス支援型)、児童発達支援、放課後等デイサービスについて、サービスの質を担保しつつ、制度の持続可能性を確保する観点から、新規事業所に限り、令和9年度報酬改定までの間、応急的な報酬単価(一定程度引き下げた基本報酬)を適用する。

これらの背景として、下記3点が主な要因となっている。

  • 障がい福祉サービス等に係る予算額は、障害者自立支援法の施行時から4倍以上に増加し、特に令和6年度報酬改定後において総費用額が+12.1%の伸び(一人あたり総費用額:+6.0%、利用者数:+5.8%)となっており、障がい福祉サービス等に係る総費用が増加した。
  • 人材確保が喫緊かつ重要な課題となっている。
  • 新規参入が増加する中、サービスの質の確保を図ることが重要。最近では、障がい福祉サービス 事業者における不適切な事案の報道等も出ている。

そこで厚生労働省は、発表された報酬改定を実施した。
今後の方向性として、最低賃金・物価上昇に伴う処遇改善の見直し、新規指定申請の厳格化、運営指導の活発化が進むと考えられます。

新規指定申請の厳格化

新規指定申請において厳格化が進む可能性があり、これまでのように「必要書類」を準備しておくのみでは不十分になる可能性があります。

具体的には、

・令和8年度のように一定の要件を満たさない新規事業所は報酬減となる可能性
・事業計画の実現可能性
・人員体制の妥当性、職業指導等を含む利用者処遇の水準
・資金計画の裏付け
・破産時等の法的整理への対応
・労働法規の確認 

といった点が想定されます。

実際の事例として、広島県では就労継続支援A型事業所に対し、指定申請の事前協議時に専門家会議の導入を行っていると出ています。

就労継続支援A型事業所の指定等に係る専門家会議の導入事例(広島県)

参照:厚生労働省 次期報酬改定に向けた検討について 第54回(R8.3.10)

このような動きが全国に広がり、全サービスで対応されることになれば、「とりあえず指定申請を取り、その後調整する」ということは難しくなります。
またコンサルティング料及びフランチャイズ料について令和8年度から調査が開始される予定です。

厚生労働省は定期的に、“障害福祉サービス等経営実態調査”を行っています。令和8年度の調査で初めてコンサルティング料及びフランチャイズ料を把握するための調査項目として追加される案が出ています。
障がい福祉事業では、フランチャイズやコンサルティングを活用した参入も増えています。活用自体が問題というわけではありませんが、下記のような新規参入を促す事例が見られます。

就労継続支援A型事業所の指定等に係る専門家会議の導入事例(広島県)

参照:厚生労働省 令和8年度における臨時応急的な見直し 第52回(R8.1.22)

これらの対策として、以下のような対応事例も見られます。
新規指定申請を委託している場合、 適切なサービス提供を行うことができる事業者であるかを判断するため、指定希望者が委託等をしている コンサルティング会社や代理者等ではなく、必ず指定希望者の法人の代表者、事業所の管理者や サービス管理責任者等(以下「法人の代表者等」という。)に対して行うこと。 少なくとも、事業計画書等の審査開始から、指定後、適切な運営が確認されるまで(例えば最初の運営指導まで)は、やむを得ないと認められる場合を除き、指定に係る審査時に面談等を行った法人の代表者等が一貫した事業運営を行うことが望ましいため、指定希望者に予めその旨を伝えること。ということも対応される例がでてきています。

参照:就労継続支援ガイドライン

今後、フランチャイズやコンサルティングを活用する場合でも制度理解と利用者ニーズが問われることになるでしょう。

運営指導の強化 ― 実態評価への転換

厚生労働省は、令和8年3月に障害保健福祉関係主管課長会議資料を公開しました。
障害福祉分野における運営指導・監査の強化について記載されています。
全国の運営指導状況も掲載されています。

都道府県等の運営指導実施状況について(令和6年度)

参照:障害保健福祉関係主管課長会議資料 令和8年3月

今後の運営指導の方向性は以下の通りです。
ア 他のサービスと比べて事業所数(特に営利法人が運営する事業所数) が急増している就労継続支援A型、就労継続支援B型、共同生活援助、児童発達支援及び放課後等デイサービスについては、3年に1回以上の頻度で行う。 その他のサービスについては3年に1回までは求めないが、原則として指定の有効期間内に少なくとも1回以上行う。

イ 新規指定後間もない事業所については、指定後3年以内に運営指導を行う。就労継続支援A型は、従来どおり新規指定の半年後を目途に初回の運営指導を実施する。

ウ 過去の指導内容、通報等により不適切な運営や報酬請求が疑われる事業所については、優先的に運営指導を行う。

ただし、現在まで運営指導・監査マニュアルや処分基準の考え方の例が作成されていなかったということもあり、令和8年度に監査マニュアルを公表する予定とされています。

以上から、マニュアル準備と指導回数の明確化により、今後運営指導が活発化すると予測されます。

まとめ

今後の新規参入戦略
制度環境の変化を踏まえると、新規参入においては以下の3点が重要です。
① 制度理解
加算取得、記録体制、人員配置について、監査・指導を前提に設計する必要があります。
② 利用者ニーズと現実的な事業計画検討
人件費の上昇を織り込んだ上で、加算依存だけでなく利用者ニーズを踏まえた稼働率と事業計画の検討が重要です。
③ 複数の選択肢の検討
新規開設に加え、M&Aや既存事業との統合は、地域の過度な事業所増加を抑え、経営リスクの低減につながります。
M&Aを行う際は、運営体制や利用者確保の状況を踏まえ、統合の可否を多角的に検討することが重要です。

今回の制度改正は、障害福祉事業における「参入」の抑制と「運営」の質を引き上げるというものです。制度改正を単なるルール変更として捉えるのではなく、経営戦略の見直しの契機として活用することが重要です。

参考:厚生労働省 第54回「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム」資料
厚生労働省 第53回「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム(持ち回り)」資料
厚生労働省 第52回「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム」資料
厚生労働省 令和8年度障害福祉サービス等報酬改定の概要
厚生労働省 令和8年3月26日:主管課長会議資料

ライター紹介
石川敦士氏
石川 敦士氏
日本クレアス税理士法人 大阪本部日本クレアス税理士法人 大阪本部
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