放課後等デイサービスはつぶれる?
倒産する原因・前兆と経営改善策などを解説
放課後等デイサービスは利用児童数や事業所数が増加している一方で、児童福祉事業の倒産件数も増えています。需要が拡大している業界であっても、利用児童の不足や人材難、報酬改定への対応の遅れなどが重なれば、経営が行き詰まる可能性があります。
そのため、「放課後等デイサービスがつぶれる原因を知りたい」「放課後等デイサービスがつぶれるのを防ぐための対策がわからない」といった経営者の方もいるのではないでしょうか。
そこで本記事では、放課後等デイサービスがつぶれる原因や前兆、倒産した場合の利用児童・職員への影響、経営改善策を解説します。自力での事業継続が難しい場合に検討できるM&A・事業譲渡についても紹介するので、放課後等デイサービスの経営に不安を感じている方は参考にしてください。
放課後等デイサービスは本当につぶれることがある?
放課後等デイサービスは、障害や発達上の特性がある就学児に対し、放課後や学校休業日に生活能力の向上に必要な支援などを提供する障害児通所支援です。利用ニーズと事業所数は増加していますが、指定を受ければ安定した利益が約束されるわけではありません。
利用児童を十分に確保できない、人員配置基準を満たせない、報酬改定へ対応できないといった問題が重なれば、赤字や資金不足に陥り、倒産・廃業・休止に至る可能性があります。
需要が拡大していても経営が安定するとは限らない
厚生労働省「令和6年社会福祉施設等調査」によると、放課後等デイサービスの事業所数は2024年10月1日時点で2万2,643カ所でした。2023年の2万1,122カ所から1,521カ所増え、増加率は7.2%です。
また、2024年9月中の利用実人員は63万3,631人、利用回数は407万3,554回でした。1人当たりの利用回数は6.4回となっています。
ただし、利用実人員は調査対象となった事業所ごとに集計されるため、複数の事業所を利用している児童が重複して含まれる可能性があります。それでも、放課後等デイサービスの利用規模が大きく、事業所数も増加していることは確認できます。
一方、事業所の増加は競争の激化にもつながります。全国の需要が伸びていても、学齢人口、競合事業所数、送迎可能な範囲、学校との位置関係などは地域ごとに異なる点には注意が必要です。市場全体の成長だけを根拠に開設すると、想定した利用児童数を確保できず、経営が行き詰まるおそれがあります。
2025年度の児童福祉事業の倒産は44件
東京商工リサーチによると、2025年度の主な医療・福祉事業の倒産件数は以下のとおりです。
| 2025年度の主な医療・福祉事業の倒産 | 件数 |
|---|---|
| 老人福祉・介護事業 | 182件 |
| 療術業 | 108件 |
| 障害者福祉事業 | 54件 |
| 児童福祉事業 | 44件 |
| 一般診療所 | 32件 |
| 歯科診療所 | 31件 |
| 医療・福祉事業全体 | 478件 |
出典:東京商工リサーチ「2025年度『医療・福祉事業』倒産、過去最多」
2025年度に発生した「医療・福祉事業」の倒産は478件で、過去最多を更新しました。このうち放課後等デイサービスを含む児童福祉事業は44件です。
なお、東京商工リサーチの倒産集計は、原則として負債総額1,000万円以上の法的整理が対象です。法的整理に至らず自主的に廃業した事業者や、一部事業所だけを閉鎖したケースは含まれないため、児童福祉市場から退出した事業者の全体像は倒産件数だけでは把握できない点には注意が必要です。
倒産・廃業・休止・指定取消しの違い
一般に「放課後等デイサービスがつぶれた」と表現される状態には、倒産だけでなく、廃業、事業所の休止、指定取消しなども含まれます。それぞれ以下のとおり原因や手続きが異なるため、区別して考える必要があります。
| 状態 | 概要 | 主な原因・判断主体 | 利用児童への主な影響 |
|---|---|---|---|
| 倒産 | 法人が債務を支払えなくなり、破産や民事再生などの手続きに入る状態 | 資金繰り悪化、債務超過など | 閉鎖または他法人による事業継続の可能性がある |
| 廃業 | 経営者が事業を終了すること | 赤字、後継者不在、人材不足など | 原則として別の事業所への移行が必要 |
| 休止 | 指定事業所の運営を一時的に停止すること | 人員不足、施設の事情、経営上の問題など | 再開まで他の事業所を利用する可能性がある |
| 指定取消し | 法令違反などを理由に指定権者が指定を取り消す行政処分 | 不正請求、人員基準違反、虚偽報告など | 障害児通所給付費等の請求ができなくなり、当該指定によるサービス提供を継続できなくなる |
| 事業譲渡 | 別法人へ事業を引き継ぐこと | 事業承継、経営再建、選択と集中など | 運営法人を変更して支援を継続できる場合がある |
赤字であっても、直ちに法的倒産へ進むとは限りません。経営者が債務を整理したうえで自主廃業したり、不採算事業所だけを閉鎖したりする場合もあります。反対に、法人が民事再生などを申し立てても、スポンサーの支援を受けて事業所の運営が続くケースがあります。
放課後等デイサービスの運営会社が倒産した大型事例
放課後等デイサービスを含む障害児・障害福祉事業では、全国的に事業を展開していた企業が法的整理に入った事例もあります。事業規模や売上高が拡大していても、急速な出店に伴う先行投資や資金管理、内部統制に問題があれば、経営が不安定になることを示す事例です。ここでは、放課後等デイサービスの運営会社が倒産した大型事例を2つ紹介します。
株式会社コペルの民事再生
株式会社コペルは、児童発達支援スクール「コペルプラス」、放課後等デイサービス、幼児教室などを直営・フランチャイズ方式で展開していました。2024年4月時点の教室数は、各事業を合わせて約550教室とされています。なお、約550教室は放課後等デイサービスだけの事業所数ではなく、児童発達支援や幼児教室などを含む数字です。
同社は2024年5月30日、東京地方裁判所へ民事再生法の適用を申請しました。負債総額は約68億8,300万円です。2018年12月期に約22億5,300万円だった売上高は、2023年12月期には約192億4,300万円まで増加していましたが、急速な拠点拡大に伴う資金需要や、新規教室の開校遅れなどによって資金繰りが悪化しました。
その後、コペルの主要事業は株式会社クラ・ゼミへ譲渡されました。この事例は、売上高や教室数が伸びていても資金繰りが安定しているとは限らないこと、法的整理後も事業譲渡によって支援を継続できる場合があることを示しています。
株式会社絆ホールディングスの会社更生手続き
株式会社絆ホールディングスは、放課後等デイサービス、フリースクール、就労継続支援A型事業所などをグループで運営していました。
2026年6月、同社とグループ会社3社が会社更生法の適用を申請し、NPO法人リアンが破産を申請しました。5法人の負債総額は約289億5,000万円に上ります。
同グループでは、主に就労継続支援A型事業所の給付費をめぐる問題が発生し、大阪市による調査や返還請求、指定取消しなどへ発展しました。
法的整理の申請時点では各事業所の営業が続けられており、同社側は事業承継先の探索を含め、障害児通所支援事業などの維持・継続に努める方針を示していました。倒産手続きに入ったからといって、すべての事業所が直ちに閉鎖されるわけではないことも分かります。
2024年度から2027年度の報酬改定が放課後等デイサービスの経営に与える影響
放課後等デイサービスの売上は、利用者から自由に設定した料金を受け取る一般的なサービス業とは異なり、国が定める障害福祉サービス等報酬の影響を強く受けるのが特徴です。
基本報酬、加算、減算や算定要件が改定されると、利用児童数が変わらなくても収益が増減する可能性があります。経営者には、制度の内容を理解し、支援体制と収支計画を継続的に見直すことが求められます。
2024年度改定で支援時間や支援の質が報酬に反映されるようになった
2024年度の障害福祉サービス等報酬改定では、放課後等デイサービスの基本報酬について、支援時間に応じた区分が導入されました。個別支援計画に定めた支援時間に基づいて報酬区分が決まるため、単に利用児童を受け入れれば同じ報酬を得られる仕組みではありません。
主な支援時間区分は次のとおりです。
| 区分 | 計画上の支援時間 |
|---|---|
| 時間区分1 | 30分以上1時間30分以下 |
| 時間区分2 | 1時間30分超3時間以下 |
| 時間区分3 | 3時間超5時間以下(学校休業日のみ) |
出典:厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定について」
個別支援計画に記載した時間と実際の支援時間が大きく異なっていたり、記録が不足していたりすると、算定の妥当性を説明できません。送迎時間や待機時間を支援時間として安易に扱わず、計画、サービス提供記録、請求内容を一致させる必要があります。
また、5領域(「健康・生活」「運動・感覚」「認知・行動」「言語・コミュニケーション」「人間関係・社会性」)を踏まえた総合的な支援、家族支援、関係機関との連携、専門的支援なども重視されています。利用児童数だけでなく、支援時間、人員配置、加算取得、計画・記録の整備状況が収益を左右しやすくなったといえるでしょう。
なお、2024年の報酬改定情報については、以下の記事も参考にしてみてください。
▶︎令和6年障害福祉サービス等報酬改定情報(全サービス主な共通改定項目)2026年度には臨時応急的な報酬改定が実施された
2026年度には、物価や賃金の上昇、人材不足、障害福祉サービス等の総費用の増加などに対応するため、臨時応急的な報酬改定が行われました。放課後等デイサービスに直接影響する主な変更は、「福祉・介護職員等処遇改善加算の拡充」と「新規事業所に対する応急的な報酬単価の特例」の2つです。
出典:厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について」
処遇改善加算については、福祉・介護職員だけでなく、障害福祉サービス等に従事する職員を幅広く対象とした賃上げ措置が講じられました。加えて、生産性向上や事業者間の協働化に取り組む事業者を対象とする上乗せ区分も設けられています。放課後等デイサービスでも、要件を満たして加算を取得できれば、職員の賃金改善に充てる原資を確保しやすくなるでしょう。
出典:厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について」
2026年度改定では、放課後等デイサービスなど、収支差率が比較的高く、事業所数が急増しているサービスを対象に「新規事業所応急基本報酬」が設けられました。対象となる新規事業所の基本報酬は通常の98.2%となるため、実質的に1.8%引き下げられます。
背景には、一部サービスで事業所数や総費用が急増し、地域の需要を十分に把握しないまま新設される事例が見られるという課題があります。そこで、制度の持続可能性を確保しながら、地域の実情に応じたサービス提供体制を整えるため、新規指定事業所に限定した応急的な基本報酬が導入されました。
ただし、重症心身障害児や医療的ケア児などを主として支援する事業所、離島・中山間地域の事業所、自治体が地域に必要と認めた事業所などには例外があります。新規開設を計画する事業者は、適用の有無を指定権者へ確認したうえで、従来より低い基本報酬を前提とした収支計画を作成する必要があります。
2026年度の報酬改定については、以下の記事も参考にしてみてください。
▶︎令和8年度報酬改定で問われる処遇改善加算の方向性 ― 職場環境要件の厳密化とM&A評価への影響 ―2027年度改定では経営の安定とサービスの適正化が論点になる
2027年度の障害福祉サービス等報酬改定について、具体的な単位数や算定要件はまだ確定していません。今後、厚生労働省の障害福祉サービス等報酬改定検討チームで議論が進められます。
障害児通所支援では、事業所数や総費用額の増加、支援の質、重度障害児や医療的ケア児への対応、地域の需給状況、職員の処遇改善、制度の持続可能性などが重要な検討材料になります。2024年度に導入された時間区分や各種加算の効果も検証対象になると考えられます。
ただし、これらは検討段階の論点です。事業者は厚生労働省の検討資料を継続的に確認し、現行制度を前提とした計画だけでなく、報酬や加算要件が変わった場合の収支計画も作成しておく必要があります。
制度改定に対応できないことが経営悪化につながる
報酬改定に対応できない場合、取得できる加算を逃すだけでなく、減算や報酬返還につながる可能性があります。特に、個別支援計画、支援時間、職員の勤務実績、研修、委員会、届出、情報公表などは、書類を整えるだけでなく、実際の運営と一致していなければなりません。
管理者や児童発達支援管理責任者だけに制度対応を任せると、退職や交代によって請求・運営管理が止まるおそれがあります。本部または経営者も算定要件を把握し、複数人で確認できる体制を整えることが重要です。
放課後等デイサービスがつぶれる9つの原因
放課後等デイサービスが経営不振に陥る原因は一つとは限りません。利用児童不足、人材不足、制度への対応遅れなどが重なり、赤字が長期化することで資金繰りが悪化します。ここでは、放課後等デイサービスがつぶれる代表的な9つの原因について解説します。
競合が増えて利用児童を確保できない
2024年10月時点の放課後等デイサービスは2万2,643カ所で、前年から7.2%増加しています。事業所数が増えれば、送迎圏内で同じ児童を対象とする競合も増えます。
開設前の需要調査が不十分だった場合や、学校・相談支援事業所との関係を構築できていない場合、定員を大きく下回る状態が続くおそれがあるでしょう。固定費である家賃と人件費は利用児童が少なくても発生するため、稼働率の低下がそのまま赤字につながりやすい事業です。
療育方針や支援内容を差別化できていない
放課後等デイサービスの場合、「預かり」だけが中心になり、支援目標や専門性を保護者へ説明できなければ、競合事業所との違いが伝わりません。
どのような児童を対象とし、どのような課題へ、どの職種が、どのような方法で支援するのかを明確にする必要があります。ただし、流行しているプログラムを導入するだけでは不十分です。地域の需要、職員の専門性、設備、人員配置、収益性を踏まえ、実施可能な支援内容を設計することが重要です。
児童発達支援管理責任者や有資格者を確保できない
放課後等デイサービスでは、管理者、児童発達支援管理責任者、児童指導員または保育士など、基準上必要な職員を配置しなければなりません。
特に児童発達支援管理責任者が突然退職し、後任を確保できない場合、個別支援計画の作成や事業所運営に重大な影響が生じます。配置基準を満たさなければ人員欠如減算などの対象となり、誤った請求があれば返還が必要になる場合があります。さらに、基準違反を放置したり、改善命令に従わなかったりした場合は、指定取消しなどの行政処分へ発展する可能性があります。
資格だけでなく、実務経験や研修の修了状況、勤務時間を確認し、勤務形態一覧表と実際の勤務実績を一致させることも必要です。勤務形態一覧表については以下の記事で詳しく解説しているので、あわせて参考にしてみてください。
▶︎勤務形態一覧表とは?障害福祉サービス事業における勤務形態一覧表の作成方法とメリットを解説職員の離職が続き人件費・採用費が膨らむ
職員が定着しなければ、求人広告費や紹介手数料が繰り返し発生します。欠員を埋めるために高い条件で採用すると、既存職員との賃金バランスが崩れ、さらなる離職を招く場合もあるため注意が必要です。
人手不足が続けば、1人当たりの業務負担が増え、記録の遅れや支援の質の低下にもつながります。採用人数だけでなく、勤続期間、退職理由、残業時間、有給休暇の取得状況などを確認し、離職が起きる原因を改善することが必要です。
放課後等デイサービスを含む障害福祉業界の人材不足への対策については、以下の記事を参考にしてみてください。
▶︎骨太の方針2026が示す障害福祉業界の転換点~人材不足・業界再編時代にM&Aが経営戦略となる理由~報酬改定や制度変更に対応できていない
障害福祉サービス等報酬は定期的に改定されます。2024年度には支援時間区分などが導入され、2026年度には新規事業所を対象とする応急的な基本報酬の仕組みも設けられました。
過去の報酬単価や加算をそのまま使った事業計画では、実際の収入を過大に見積もる可能性があります。改定のたびに利用児童1人当たりの売上、職員1人当たりの人件費、加算取得率を再計算し、必要に応じて人員配置や運営方法を見直さなければなりません。
放課後等デイサービスなどの障害福祉事業に関連する報酬改定・制度変更については、以下の記事も参考にしてみてください。
▶︎次期報酬改定を見据え、令和8年度から障がい福祉事業所はより厳しい局面へ▶︎【令和8年度最新】知らないと危険な制度変更―障がい福祉報酬改定で何が変わるのか?今後の経営と新規参入戦略―
▶︎障がい福祉サービス事業所様における主な減算の内容について
加算を十分に取得できず減算リスクも管理できていない
放課後等デイサービスの収入は、基本報酬だけで決まるわけではありません。職員の配置状況、専門的な支援の実施、家族や関係機関との連携などに応じて加算を取得できます。一方、人員配置や個別支援計画、情報公表などの要件を満たさなければ、基本報酬が減算される場合がある点には要注意です。
厚生労働省の「令和7年度障害福祉サービス等報酬改定検証調査」では、児童発達支援・放課後等デイサービス事業所における主な加算の算定状況が、次のように報告されています。
| 加算・算定区分 | 2025年6月の算定割合 |
|---|---|
| 児童指導員等加配加算(常勤専従・経験5年以上) | 53.1% |
| 児童指導員等加配加算(常勤専従・経験5年未満) | 17.5% |
| 専門的支援体制加算 | 50.7% |
| 専門的支援実施加算 | 40.1% |
※児童発達支援と放課後等デイサービスを合わせた調査結果。
※複数の加算や区分を算定している場合があるため、割合を合計しても100%にはならない。
出典:厚生労働省「令和7年度障害福祉サービス等報酬改定検証調査 結果の概要」
同調査によると、児童指導員等加配加算を算定している事業所のうち、74.7%は「もともと基準以上の職員規模で運営しており、加算要件に該当する職員を加算対象とした」と回答しています。加算を取得するために新たな職員を雇うだけでなく、現在の職員配置や保有資格、実務経験を整理することで、取得できる加算が見つかる可能性があります。
ただし、取得できる加算をすべて算定すればよいわけではありません。加算のために職員を増やしても、追加される報酬より人件費が大きければ、かえって利益を圧迫します。利用児童の支援ニーズ、必要な人員、加算単位数、人件費を照らし合わせ、事業所ごとに採算性を確認する必要があります。
一方で、次のような状態は減算につながる可能性があります。
- 児童発達支援管理責任者や児童指導員・保育士が不足している
- 個別支援計画が適切に作成されていない
- 利用定員を超えた受け入れが続いている
- 支援プログラムや自己評価結果を公表していない
- 業務継続計画の策定や必要な取り組みを行っていない
減算の見落としが判明すると、過去の請求分について返還が必要になる場合もあります。毎月の勤務形態一覧表、資格証、個別支援計画、支援記録、届出内容を照合し、加算要件を満たしているか、減算対象になっていないかを定期的に点検することが重要です。
障害福祉経営における加算戦略については、以下の記事も参考にしてみてください。
▶︎“基本報酬減”時代の障がい福祉経営 加算戦略とM&Aの重要性▶︎障害児通所支援事業における新加算・家族支援加算について
不正請求や法令違反による返還・行政処分が発生する
放課後等デイサービスでは、実際に提供していない支援の請求、利用日数の水増し、人員配置を偽った加算の算定などが発覚すると、給付費の返還だけでなく、指定の効力停止や指定取消しに至る可能性があります。単純な請求ミスと故意の不正請求は区別されますが、誤りを把握したまま請求を続けたり、監査で虚偽の資料を提出したりすれば、重大な法令違反と判断されかねません。
出典:厚生労働省「障害福祉分野における運営指導・監査の強化について」
厚生労働省の資料によると、2024年度における放課後等デイサービスの行政処分数は56件で、このうち営利法人に対する処分が39件でした。児童発達支援の処分数は23件で、このうち20件が営利法人に対する処分です。
不正請求が発生すると、過去の給付費の返還によって資金繰りが急激に悪化する可能性があります。指定が取り消されれば、その指定に基づく放課後等デイサービスの提供を継続できません。請求担当者だけに確認を任せず、勤務形態一覧表、出勤簿、個別支援計画、サービス提供記録、利用実績、請求データを毎月照合し、管理者や法人本部による二重確認を行うことが重要です。
国は、児童発達支援や放課後等デイサービスなどを重点対象とし、原則として3年に1回以上、年間約33%の事業所に運営指導を実施する方針を示しています。運営指導については、以下の記事も参考にしてみてください。
物価・人件費が上昇しても自由に価格転嫁できない
放課後等デイサービスの報酬は公定価格を基本とするため、食料品、教材、光熱費、ガソリン代、人件費が上昇しても、事業者の判断だけで自由にサービス価格を引き上げることはできません。
特に送迎範囲が広い事業所では、車両費、燃料費、保険料、運転担当者の人件費が収益を圧迫します。処遇改善加算などを適切に活用するとともに、送迎ルート、車両台数、職員配置、購入契約を見直し、支援の質や安全性を損なわない範囲でコストを管理する必要があるでしょう。
資金繰りや経営数値を管理できていない
損益計算上は黒字でも、給付費の入金時期と給与・家賃などの支払時期がずれれば資金不足が発生します。新規開設、採用、車両購入などの支出が重なる時期には、特に注意が必要です。
月次試算表だけでなく、事業所別の売上、稼働率、人件費率、加算取得率、返済額、手元資金を確認し、少なくとも数カ月先までの資金繰り表を作成しましょう。障害福祉サービス等の経営情報報告も、経営数値を整理する機会として活用できます。
障害福祉事業における経営情報の見える化については、以下の記事も参考にしてみてください。
▶︎障がい福祉サービス業界における新制度(経営情報の見える化)とM&Aの関連性?▶︎障害福祉サービス事業所における情報公表制度について~毎月確認・更新が必要な実務対応のご案内~
つぶれる可能性が高まっている放課後等デイサービスの前兆
次の兆候が一つ見られただけで、直ちに倒産するとは限りませんが、複数の兆候が同時に発生し、改善されない状態が続いている場合は、経営・運営の両面で問題が深刻化している可能性があります。ここでは、つぶれる可能性が高まっている放課後等デイサービスの8つの前兆について解説します。
利用児童数・稼働率が下がり続けている
利用児童数や稼働率の継続的な低下は、放課後等デイサービスの経営状態が悪化している代表的な兆候です。契約者数に大きな変化がなくても、利用回数の減少や欠席率の上昇によって、実際の売上が下がっている場合もあります。
利用児童が減っても、家賃や人件費、車両費などの固定費は大きく変わりません。曜日別の稼働率、欠席率、問い合わせ数、契約率、退所理由を毎月確認し、減少の原因に応じた改善策を講じる必要があります。
児童発達支援管理責任者や管理者が頻繁に交代する
児童発達支援管理責任者や管理者が短期間で何度も交代している場合、事業所の運営体制が安定していない可能性があります。経営方針の変更、業務負担の集中、職場内の人間関係、待遇への不満などが交代の背景にある場合もあるでしょう。
特に児童発達支援管理責任者の後任を確保できない場合は、人員配置基準や報酬算定にも影響します。退職が決まってから採用活動を始めるのではなく、管理職候補の育成や業務の標準化を進めておくことが重要です。
職員の退職が続き常に求人を出している
職員の退職が相次ぎ、年間を通じて求人を出している状態も、経営・運営上の問題を示す前兆です。職員が定着しなければ、求人広告費や人材紹介手数料、採用後の研修費が繰り返し発生し、人件費以外の採用コストも増加します。人員に余裕がなくなれば、支援の準備、記録、保護者対応、職員研修に十分な時間を割けず、サービスの質にも影響しかねません。
求人への応募が少ない場合は、給与水準だけでなく、勤務時間、休暇制度、業務内容、教育体制を見直す必要があります。採用数だけを追うのではなく、勤続期間や退職理由を把握し、職員が定着しにくい原因を改善することが大切です。
給与や取引先への支払いが遅れている
職員の給与、社会保険料、家賃、車両のリース料、教材費、外注費などの支払いが遅れている場合、資金繰りが切迫している可能性があります。売上が計上されていても、給付費の入金前に支払期限を迎えれば、手元資金が不足することがあるため注意が必要です。
特に給与、税金、社会保険料の滞納は、職員の離職や金融機関からの信用低下にもつながります。支払いが困難になる前に資金繰り表を作成し、金融機関や専門家へ相談しましょう。
備品・車両・設備を更新できない
壊れた備品や設備の修理が長期間先送りされ、老朽化した送迎車両も更新できない場合、設備投資や修繕に回す資金を確保できていない可能性があります。放課後等デイサービスでは、送迎車両や施設設備の状態が、利用児童の安全に直接関わります。必要な点検や修繕を先送りすると、事故や故障によってサービスを提供できなくなるだけでなく、保護者からの信用を失うおそれもあるため要注意です。
修繕費を抑えること自体が問題なのではありません。しかし、安全性や支援の質に必要な支出まで削減している場合は、経営状態が悪化している可能性があります。設備ごとに更新時期と概算費用を整理し、中長期の資金計画へ反映させることが重要です。
記録や個別支援計画の不備が増えている
日々の支援記録が作成されていない、個別支援計画の更新期限を過ぎている、必要なモニタリングや保護者面談を実施できていない場合は、運営管理が機能しなくなっている可能性があります。個別支援計画に記載した支援時間とサービス提供記録、勤務形態一覧表と実際の出勤状況、請求データと日々の利用実績に違いがある場合は、特に注意が必要です。
書類の不備は事務上の問題にとどまりません。運営指導などで報酬の算定根拠を示せなければ、過誤調整や給付費の返還が必要になる可能性があります。返還額が大きくなれば、資金繰りを急速に悪化させる原因にもなるでしょう。
保護者からの苦情・退所が増えている
保護者からの苦情や利用児童の退所が増えている場合、支援内容や運営体制に問題が生じている可能性があります。特に、同じ内容の苦情が繰り返されている場合は、個々の職員の問題として処理するのではなく、組織全体の業務手順や情報共有を見直す必要があります。苦情への対応が遅れたり、説明が担当者によって異なったりすると、保護者との信頼関係がさらに悪化しかねません。
退所が増えると稼働率が低下し、口コミや紹介による新規利用にも影響します。苦情件数だけでなく、内容、対応結果、再発状況、退所理由を記録し、改善策を事業所内で共有することが重要です。
月次決算や資金繰り表を作成していない
月次決算や資金繰り表を作成せず、預金通帳の残高だけで経営状態を判断している場合、赤字や資金不足の発見が遅れる可能性があります。放課後等デイサービスでは、利用児童数、欠席、加算取得、人員配置によって月ごとの収益が変わります。法人全体では黒字でも、特定の事業所が赤字を出し続け、他拠点の利益や借入金で補填している場合がある点には注意が必要です。
月次で事業所別の売上、稼働率、人件費率、加算取得率、固定費、借入返済額を確認し、数カ月先までの入出金を予測しましょう。数値を早期に把握できれば、コストの見直し、金融機関への相談、事業所の統合や譲渡など、選択肢が残っている段階で対応できます。
放課後等デイサービスがつぶれると利用児童・職員はどうなる?
倒産・廃業が発生しても、その日のうちに必ず事業所が閉鎖されるとは限りません。法的整理の種類、事業を引き受ける法人の有無、指定権者の対応などによって、その後の運営は異なります。
利用児童は別の事業所を探す必要がある
事業所が廃止され、事業承継も行われない場合、利用児童は別の放課後等デイサービスを探す必要があります。ただし、地域によっては空きが少なく、同じ曜日や送迎条件で利用できる事業所がすぐに見つからないこともあるでしょう。相談支援専門員、市区町村、学校、他の事業所と連携し、児童の特性や支援目標を引き継ぐことが重要です。
保護者には早めの説明と移行支援が必要になる
事業を廃止・休止する場合、事業者には保護者へ事情や終了時期を説明し、他のサービス提供事業者などと連絡調整を行うことが求められます。閉鎖直前まで情報を伝えなければ、保護者は新しい事業所を選ぶ時間を確保できません。経営上の機密に配慮しつつも、終了が避けられない段階では、指定権者と相談して計画的に説明・移行支援を進める必要があります。
職員は退職・解雇となる可能性がある
法人が破産し事業も終了する場合、職員は退職または解雇となる可能性があります。未払い賃金がある場合は、破産手続きにおける請求や未払賃金立替払制度の利用を検討しましょう。
一方、民事再生、会社更生、M&Aによって事業が続く場合は、雇用を維持できる可能性があります。ただし、給与、勤務地、勤務時間などの条件が必ず同じまま引き継がれるとは限りません。
放課後等デイサービスがつぶれるのを防ぐ経営改善策
経営改善では、売上だけを増やすのではなく、支援の質、人員配置、法令遵守、資金繰りを一体的に見直す必要があります。ここでは、放課後等デイサービスがつぶれるのを防ぐための、7つの経営改善策について解説します。
稼働率・欠席率・問い合わせ数を数値で管理する
契約者数だけでなく、曜日別の定員充足率、欠席率、振替率、問い合わせ数、見学数、契約率、退所理由を毎月確認します。特定の曜日だけ空きが多い場合は、学校の下校時間や送迎ルートを見直すなど、原因に応じた対策が必要です。欠席の多さを新規契約だけで補うのではなく、利用しにくい理由や支援への不満がないかも確認しましょう。
地域ニーズと自事業所の強みを明確にする
自治体の障害児福祉計画、学校・相談支援事業所への聞き取り、既存事業所の分布などから、地域で不足している支援を把握します。そのうえで、学習支援、生活訓練、運動、社会性、重症心身障害児への支援など、自事業所が継続的に提供できる価値を明確にしましょう。専門性を掲げる場合は、対応できる職員、設備、安全管理体制も整える必要があります。
人材採用だけでなく定着に取り組む
求人広告を増やすだけでなく、業務量、休暇、教育体制、人事評価、管理者との面談、キャリア形成などを見直します。記録や請求業務をICTで効率化し、支援準備や振り返りに使える時間を確保することも有効です。処遇改善加算による賃金改善については、配分方法を明確にし、職員へ分かりやすく説明しましょう。
取得できる加算と減算リスクを定期的に確認する
2024年度・2026年度改定後の算定状況を確認し、取得可能な加算、必要な資格、人員配置、追加コストを一覧にします。同時に、人員欠如、計画未作成、情報未公表、業務継続計画の未策定、虐待防止措置や身体拘束廃止に関する必要な取り組みの未実施など、減算対象になっていないか自主点検しましょう。個別支援計画と実際の支援時間、勤務形態一覧表と出勤記録、請求データと支援記録を照合することが重要です。
2027年度改定も見据え、現状維持、報酬減少、加算取得という複数の条件で収支計画を作成しましょう。必要な取り組みについては、以下の記事も参考にしてみてください。
▶︎障害福祉サービス事業所様に置いて取組みが必要な4月からの加算、処遇改善、賃上げ補助金やその他について運営指導に備えて書類と実態を一致させる
運営指導対策は、直前に不足書類を作ることではありません。個別支援計画、モニタリング、支援記録、勤務表、研修記録、委員会議事録、届出、公表内容が日常の運営実態と一致していることが重要です。担当者だけが分かる状態を避け、作成者、確認者、期限、保存場所を決めます。定期的な内部点検や外部専門家による確認も、返還・処分リスクの軽減につながります。
不採算事業所の統合・縮小を検討する
放課後等デイサービスを含む複数の事業所を運営している場合は、法人全体の数字だけでなく、拠点別の収支を確認します。一部事業所の赤字を他拠点の利益で補い続けると、法人全体の資金を失うおそれがあるため要注意です。改善の見込みが乏しい場合は、営業日や送迎範囲の見直し、近隣拠点との統合、事業譲渡、計画的な撤退を比較します。利用児童への影響を抑えるには、資金が尽きる前に判断することが重要です。
金融機関や専門家へ早めに相談する
給与や税金、社会保険料の支払いが遅れてから相談すると、利用できる選択肢が限られます。資金繰りに不安が生じた段階で、金融機関、税理士、弁護士、社会保険労務士、M&A支援会社などへ相談しましょう。専門家へ相談する際は、月次試算表、資金繰り表、借入一覧、事業所別収支、加算・減算の状況、指定・行政指導に関する資料を準備すると、より具体的な検討ができます。
自力での事業継続が難しい場合はM&Aも選択肢になる
経営改善を行っても自力での継続が難しい場合は、倒産や廃業だけでなく、M&Aによって他法人へ事業を引き継ぐ方法があります。M&Aは事業者を救済するだけの手段ではありません。利用児童への支援、職員の雇用、地域の障害児支援体制を残すための事業承継手段でもあります。
ここでは、放課後等デイサービスをM&Aで譲渡するメリットや、実際の事例などについて解説します。
倒産・廃業とM&Aの違い
経営の継続が難しくなった放課後等デイサービスには、倒産や廃業だけでなく、M&Aによって他法人へ事業を引き継ぐ選択肢があります。ただし、事業の継続性や利用児童・職員への影響、債務の扱いなどは選択する方法によって異なります。それぞれの主な違いを、以下の表で確認しましょう。
| 比較項目 | 倒産 | 廃業 | M&A・事業譲渡 |
|---|---|---|---|
| 事業の継続 | 法的手続きやスポンサーの有無による | 原則として終了 | 買い手のもとで継続できる可能性がある |
| 利用児童 | 転所が必要になる場合がある | 原則として移行が必要 | 同じ事業所を利用できる可能性がある |
| 職員 | 解雇・退職となる可能性がある | 雇用終了となる可能性が高い | 雇用を引き継げる可能性がある |
| 債務 | 法的手続きで整理 | 経営者側で清算 | 譲渡方法と契約条件による |
| 経営者 | 経営権を失う場合がある | 廃業費用が発生 | 譲渡対価を得られる可能性がある |
| 手続き | 裁判所が関与する場合がある | 廃止・清算手続き | 買い手探索、調査、契約、指定手続きなどが必要 |
倒産や廃業では事業所の運営が終了し、利用児童は別の事業所を探さなければならない可能性があります。一方、M&Aでは運営法人を変更し、同じ事業所で支援を続けられる場合があります。職員の雇用を維持できる可能性がある点もM&Aの特徴です。
ただし、M&Aを行えば、利用契約や雇用条件、指定が必ずそのまま引き継がれるわけではありません。特に事業譲渡では、買い手による指定申請や、職員・取引先との契約手続きが必要になる場合があります。利用児童への支援を途切れさせないためには、指定権者へ早めに相談し、必要な手続きとスケジュールを確認することが重要です。
放課後等デイサービスをM&Aで譲渡するメリット
M&Aによって事業所の運営を引き継げれば、利用児童が慣れた場所や職員による支援を継続できる可能性があります。保護者にとっても、空きのある事業所を一から探す負担を抑えられるでしょう。職員についても、買い手との合意により雇用を維持できる場合があります。採用力や資金力を持つ法人が引き継げば、欠員の補充、設備更新、研修体制、請求・法務管理などを改善できることもあるでしょう。
複数拠点を運営している場合には、不採算拠点だけを譲渡し、経営者が収益性の高い事業へ集中することも一つの方法です。後継者がいない法人では、第三者承継によって事業終了を回避できる可能性もあります。
ただし、これらは買い手や譲渡条件によって異なります。支援方針、職員の雇用、事業所名などを維持したい場合は、価格だけでなく譲渡条件として交渉が求められるでしょう。
障害福祉サービス事業者のためのM&Aについては、以下の記事も参考にしてみてください。
▶︎売却か継続か?障害福祉サービス事業者がM&Aを考えるポイントとは▶︎障がい福祉サービスのM&Aが活発化!~M&Aの方法とは?~障がい福祉特有の注意点を解説
赤字の放課後等デイサービスでも売却できる可能性がある
赤字であることだけを理由に、M&Aが不可能になるとは限りません。買い手は現在の利益だけでなく、利用児童数、立地、職員体制、指定状況、設備、地域ニーズ、他拠点との相乗効果などを確認します。買い手が近隣で事業所を運営している場合、管理部門、採用、研修、送迎などを効率化し、譲受後に収益を改善できることがあります。
一方、給与・税金・社会保険料の滞納、多額の返還リスク、行政処分、人員基準違反などがあると売却の難易度は上がります。職員や利用児童が離れ、資金が尽きてからでは交渉時間も限られるため、事業価値が残っている段階で相談することが大切です。
その他に注意すべきポイントは、以下の記事で詳しく解説しています。
▶︎障がい福祉サービス事業のM&Aで売り手が注意するポイント放課後等デイサービスのM&A事例
放課後等デイサービスのM&Aは、赤字や資金不足への対応だけを目的に行われるものではありません。遠方拠点の管理負担を軽減して経営資源を特定の地域へ集中するため、不採算事業から撤退するため、後継者不在を解消するためなど、譲渡を検討する理由は事業者によって異なります。ここでは、実際に放課後等デイサービス・児童発達支援事業を譲渡した事例を紹介します。
この他のM&A事例については、以下のページを参考にしてみてください。
▶︎ご成約事例▶︎お客様インタビュー 一覧
遠方拠点を譲渡し関東エリアへの集中を進めた株式会社ウェルリソース
株式会社ウェルリソースは、高齢者向け事業に加え、放課後等デイサービスや児童発達支援などを複数展開している事業者です。同社は事業エリアを再編するため、福島県で運営していた放課後等デイサービス・児童発達支援事業を譲渡しました。
福島県の事業所は利益や稼働率に問題があったわけではありません。しかし、本社から距離があるうえ、現地の管理を担っていた取締役が退職したことで、本社側の職員が交代で現地へ出向かなければならなくなりました。職員の移動負担やガバナンスを考慮し、都内・関東エリアへ経営資源を集中させるため、事業の一部譲渡を決断しています。
買い手を選ぶ際には、譲渡条件だけでなく、経営方針の相性や譲渡後も相談できる関係性を重視しました。複数社との面談を経て、管理体制が整い、職員が安心して働き続けられると判断した相手へ譲渡しています。
譲渡後は遠方拠点を管理する負担が軽減されただけでなく、譲渡によって得た資金を別事業の展開に活用できました。この事例は、赤字や経営不振の解消だけでなく、事業エリアの再編や経営資源の集中を目的としてM&Aを活用できることを示しています。
▶︎遠方拠点の課題を乗り越えて──M&Aで進めた事業エリア再編と集中戦略月160万円の赤字から約2週間で法人譲渡を実現した事例
放課後等デイサービスと児童発達支援を運営していた佐藤様は、以前に経営していた学習塾で、障害のある子どもと接した経験をきっかけに障害児支援事業へ参入しました。しかし、児童発達支援管理責任者などの採用が進まず、開業時期が予定から約3カ月遅れたことで、当初の資金計画にずれが生じます。開業後も利用児童の確保が思うように進まず、赤字経営が続いていました。
相談時には月160万円ほどの赤字が発生しており、自己資金による補填を続ければ経営者自身も大きな損失を抱える状況でした。顧問税理士からも早めに動くよう助言を受け、M&Aによる譲渡を検討します。しかし、一般的なM&Aには短くても3カ月ほどかかると聞き、一時は事業所の閉鎖を決断して職員にも説明していました。
その後、相談直後に買い手候補が見つかり、当月からの引き継ぎを希望する相手との交渉が進みました。当初は事業譲渡を想定していましたが、思いを込めて立ち上げた会社と施設を残せる法人譲渡が提案され、相談から実行まで約2週間という短期間で成約に至っています。
譲渡によって事業所の閉鎖を回避でき、職員も引き続き勤務しています。引き継ぎ後は売上も順調に伸びたとされており、利用児童への支援と職員の雇用を維持できた事例です。すべての案件を短期間で成約できるわけではありませんが、資金が尽きる前に相談したことで、閉鎖以外の選択肢を確保できたケースといえます。
▶︎閉鎖覚悟からの急展開!ご相談から実行まで約2週間のスピードM&A放課後等デイサービスの経営に関するよくある質問
放課後等デイサービスの経営に関するよくある質問とその回答を紹介します。
放課後等デイサービスは儲からない?
放課後等デイサービスでも、適切な稼働率、人員配置、加算取得、コスト管理ができれば利益を確保することは可能です。ただし、同じ利用児童数でも、地域の競争状況、家賃、送迎範囲、人員構成、加算取得状況によって収支は異なります。「指定事業だから安定して儲かる」とは限りません。
放課後等デイサービスの赤字は何ヶ月まで許容できる?
一律に許容できる期間はありません。手元資金、毎月の資金流出額、借入返済、改善に必要な期間によって異なります。
例えば、手元資金を毎月の実質的な資金流出額で割ると、現状のまま事業を続けられる期間の目安を計算できます。ただし、給与や税金などの遅延が見込まれる場合は、その前に金融機関や専門家へ相談すべきです。
放課後等デイサービスが突然閉鎖することはある?
経営破綻、指定取消し、重大な法令違反、児童発達支援管理責任者などの欠員によって、急な休止・閉鎖に至る可能性はあります。ただし、通常は指定権者への届出、利用児童・保護者への説明、他の事業所との連絡調整などが必要です。倒産手続きに入っても、スポンサーや事業譲渡によって運営が続く場合もあります。
つぶれそうな放課後等デイサービスの特徴は?
利用児童数の継続的な減少、職員の相次ぐ退職、児童発達支援管理責任者の頻繁な交代、給与や取引先への支払い遅延、記録・個別支援計画の不備などが代表的な兆候です。一つだけで倒産を判断することはできませんが、複数の問題が長期間続いている場合は注意が必要です。
放課後等デイサービスを廃業するには何が必要?
指定権者への廃止届を提出するほか、利用児童・保護者への説明、相談支援事業所や他のサービス事業者との連絡調整、職員への通知、取引契約の整理などが求められます。届出期限や必要書類は指定権者によって確認が必要です。利用児童への支援を途切れさせないよう、廃止を決める前から指定権者へ相談しましょう。
放課後等デイサービス終了後はどうなる?
利用中の事業所が終了した場合は、相談支援専門員や自治体と相談し、他の放課後等デイサービスなどへの移行を検討します。児童の特性、支援目標、送迎、利用曜日などを踏まえて候補を探す必要があります。
児童本人が高校を卒業するなどして放課後等デイサービスの対象から外れる場合は、必要に応じて生活介護、就労移行支援、就労継続支援、自立訓練、地域生活支援などを検討します。卒業後に自動的に別のサービスへ移るわけではないため、早い段階から移行支援を進めることが重要です。
まとめ
放課後等デイサービスの事業所数と利用規模は拡大していますが、すべての事業所が安定して経営できるわけではありません。競合の増加、人材不足、報酬改定、加算・減算への対応不足、物価や人件費の上昇、資金管理の不備などが重なれば、倒産・廃業に至る可能性があります。
経営を継続するためには、稼働率や資金繰りを毎月把握し、人員配置、加算、記録、請求内容を定期的に点検することが重要です。2027年度の報酬改定も見据え、複数の条件で収支計画を作成しておきましょう。
自力での改善が難しい場合には、事業価値や手元資金が残っているうちにM&A・事業譲渡を検討する方法もあります。利用児童への支援や職員の雇用をできる限り守りながら事業承継を進めたい場合は、障害福祉分野の制度とM&Aの双方に詳しい「障害福祉M&A支援センター」へご相談ください。
ブティックス(株)へ入社後、介護用品通販ショップの運営責任者、有料老人ホームの入居者紹介事業の責任者を歴任。その後、CareTEXの立ち上げメンバーとして、様々な介護福祉業界ニーズのマッチングに着手。
2015年にはM&A事業を立ち上げ、介護福祉業界における広い人脈を背景に10年間で120件の成約実績を持つ。


